自然が豊かである場所にはその分 多くの種類の生き物 が住み、中には毒をもつ生 き物もいます。本来その毒は生き物自身を敵から守るためのものです。人の血を吸う蚊やアブなどの仲間をのぞけば、人間が捕 まえようとしたり近づいたりしたりすることがないかぎり、生き物 の方から近づいてきておそわれることはありません。
ただし、観察している時に偶然それらの生き物に近づいてしまうことがあります。その場合 はあわてずゆっくりとその場からはなれるようにしてください。
ハチは危険な生き物の代表格 です。黄色と黒色のしま模様は「危険 だから近づかないで」というハチからの警告です。工事中で立入禁止の場所など、人間 の社会でも黄色と黒色のしま模様は危険をあらわしています。このような危険を知 らせる模様を「警告色」というのですが、残念 ながら危険な生き物すべてが警告色をしていて見分けられるわけではありません。
危険な生き物かどうかを見分 けるためには種類を覚えておく必要 がありますが、種類は大変多くすべては覚 えられません。知らない生き物 を見つけた場合は、直接手でさわらないようにしましょう。
ハチはとても種類が多いのですが、特に危険なのはアシナガバチ、スズメバチ、ミツバチで、注意が必要です。ハチの毒針 で刺されると強い痛 みを感じ、大きくはれ、最悪の場合ショック症状を起こします。
ただしハチも自分たちを守るために毒針を持っているのであって、人を見つけてむやみやたらと刺 すためではありません。ハチ自身が危険を感 じた時、たとえば気づかずに人がハチの巣に近づいてしまった場合などに攻撃 してきます。もしハチの巣を見つけたら決して近 づかないようにしてください。
アシナガバチやスズメバチは、低い木の葉がしげった場所(植え込みなど)に巣を作ることがあり、見えにくいので気がつかずに近 づいてしまうことがあります。ハチの巣に近づいた場合 、働きバチが人の周囲を飛びまわり警告をはじめます。万が一 ハチの巣に近づいてしまった場合、あわてずに身 を低くして、ゆっくりと巣から遠 ざかるようにしてください。
【木の枝に作られたキイロスズメバチの巣 】
【作りはじめのアシナガバチ巣(上)】
【やぶの中に作られた見つけにくい巣
(下)】
ハチはあまいにおいのするものを好みます。あまいジュースなどはハチがよってくる原因 にもなります。ヘアスプレーや化粧品のにおいなども同様です。汗のにおいによってくることもあります。もしハチが近よってきたら手 でふりはらったりしてはいけません。あやまってハチに当たったりすると逆に刺されます。身を低くしてハチが通 りすぎるのを待つか、そっとゆっくりハチからはなれるようにしてください。おどろいて急に動 くとハチを刺激するばかりか別の事故 につながります。
ハチが攻撃する場合、黒いものを集中的に攻撃する習性があります。野外 に出かける時には黒っぽい服装はさけるようにしましょう。
危険だからといってハチをあみで捕らえ、ふみつぶして殺した場合 、体内の毒液が飛 び散ります。これには警報フェロモン(においのようなもの)がふくまれていて、巣が近くにある場合、仲間に危険 を知らせ呼びよせる効果 があります。かえって危険なので、むやみにハチを殺してはいけません。
【樹液に来たオオスズメバチ】
雑木林のクヌギやコナラの木は樹液を出 し、カブトムシなどが集まります。スズメバチもこの樹液が大好きでよく集まります。オオスズメバチはえさ場でもなわばり意識 が強く攻撃的なので、樹液 にハチがいた場合は絶対に近 づかないようにしてください。
危険な生き物の代表格 で小型のヘビです。やぶの中を好み、外周 道路沿いの石や切 り株の上でひなたぼっこをしていることがあります。基本的に近づかなければ攻撃してくることはありません。万 が一咬まれた場合はすぐに病院に行き治療をする必要があります。
体長1mほどのカラフルなヘビで水辺に多 く、カエルやオタマジャクシを食べます。毒のあるヒキガエルを食 べることでその毒を利用します。性格 はおとなしく攻撃してくることはまずありませんが、毒はマムシ以上 に強いです。
落ち葉のたまった場所や石 の下、倒れた枯れ木 の下などにいて他の生き物 (昆虫など)を捕らえて食 べます。キャンプなどの時、脱いだ靴の中にムカデが入り込み、気 づかずにはくと激痛がはしります。咬まれた場所 は大きく腫れ、発熱 することもあります。ムカデの毒はハチに似ていて、咬 まれた場合の対処方法はハチの場合 と同様です。
いわゆる毛虫といわれる蛾の幼虫の仲間の多くは毒を持 っていませんが、ドクガやイラガの仲間などは毒を持 っています。ドクガは毒針毛という毒のある毛 を持ち、まゆや成虫になってもその毛を体 に付着させています。“デンキムシ”とも呼ばれるイラガの幼虫に刺されると強い痛 みがともないます。刺されてしまった場合はセロハンテープなどを使 ったり水洗いして毒針毛を取り除 き、虫刺されの薬を塗 ります。
【ドクガの幼虫】
【イラガの仲間の幼虫】
アオカミキリモドキの仲間は体内にカンタリジンという毒成分 を持ち、あやまって潰してしまい体液に触 れるとヤケドのような状態になります。初夏に観察会を行うと必ずといってよいほど見 つかります。アオバアリガタハネカクシの仲間も体内にペデリンという毒成分を持ち、同じようにヤケドのような炎症 を起こします。夜、街灯などの明かりに飛んでくる習性があります。
【アオカミキリモドキ】
ヒキガエルは皮膚から毒を出すので有名 です。おとなしいカエルでよほどのことがない限り毒を分泌 することはありませんが、非常に強力なので直接 触ってはいけません。アマガエルなどの他のカエルや両生類 なども皮膚に抗菌成分を分泌していて、直接触った手 で目をこすると炎症を起こすことがあります。
【アマガエル】
【ヒキガエル】