夏になるとこどもの国でもたくさんのセミが鳴きます。セミは日本に約30種類いて、こどもの国では6種類が見られます。セミはカメムシ目に含まれ、カメムシやアメンボなどと同じ仲間に分類されます。カメムシ目の昆虫は蛹にはならず(不完全変態)、幼虫が羽化して成虫になります。また、ストローの様な口を持っていて、草や木の汁、種類によっては他の生き物の体液などを吸います。
【7月下旬~9月 雑木林を中心に園内全域】
こどもの国で最も普通に見られるセミです。「ジリジリジリジリ…」という鳴き声が、油で揚げ物をする時の音に似ているので油蝉と呼ばれる様になったとされます。どこにでもいるセミですが、翅が不透明なセミは世界的には珍しいです。
【6月下旬~8月 雑木林】
こどもの国で最も早く鳴き始める小型のセミです。幼虫は湿気を好み、都市化が進むと見られなくなってしまいます。しかし近年都市化に適応して増えつつあるという報告もあります。「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」という有名な松尾芭蕉の句のセミはニイニイゼミだとされています。
【7月上旬~8月 雑木林】
朝夕に「カナカナカナカナ…」と物悲しくなくセミです。俳句の季語では秋を表し、そのため夏の終わりに鳴くセミだと思われていますが、ニイニイゼミの次に鳴き出す夏前半に見られるセミです。幼虫はスギなどの針葉樹を好みます。また、セミヤドリガというガの幼虫に寄生されることがあります。
【7月下旬~9月上旬 雑木林】
「ミーンミンミンミン…」という鳴き声でおなじみのセミですが、アブラゼミに比べて数は少なくなります。幼虫はやや乾燥した土を好み、本来は山の斜面などで発生しますが、住宅地の公園などで集中的に発生していることがあります。
【7月下旬~9月 雑木林】
「オーシーツクツクツク、ツクツクボーシ…」という鳴き声からこのような名前がつけられました。こどもの国では最も遅く現れ、9月になるとツクツクボウシの鳴き声ばかりが目立つ様になります。あるオスが鳴いている時、近くにいる他のオスが「ジーィ」と邪魔する様に鳴きます(邪魔鳴き)。
【7月下旬~8月雑木林】
こどもの国で見られるセミの中では最大で、早朝から午前中を中心に「ワシャワシャワシャ…」と鳴きます。もともと暖かい地方のセミですが、温暖化にともない年々北上してきています。園内ではいまだにクマゼミの抜け殻は見つかっていませんが、近隣の住宅地では集中して発生しているところがあります。
8月中旬、自由広場のケヤキの幹の低いところに、アブラゼミがとまっているのを見かけるようになります。そのほとんどがメスで、驚かさないでそっと近づくと、お腹から産卵管を木の皮に突き刺して、卵を産みつけている様子を見ることができます。
アブラゼミの卵は長さ2ミリほどの細長い米粒の様な形をしています。そのまま冬を越し、翌年の6月頃、梅雨の時期にふ化して幼虫になり、地面に落ちて土の中にもぐります。幼虫は木の根から汁を吸いながら、ゆっくりと5年かけて成長します。
成長したセミの幼虫は、夏が来ると土の中から外に出て羽化し、成虫になります。羽化は夕方日が沈んで暗くなってから始まります。天敵の野鳥などが活動しない夜を選んで羽化するのだと考えられています。
日暮れとともにセミの幼虫は木を登り始めます(写真はアブラゼミ)。高いところまで登る幼虫もいますが、草など低いところで羽化を始めるものもいます。
幼虫の背中が割れて羽化が始まります。
まず頭が出てきます。
そのまま頭を下にして逆さにぶら下がり、脚をぬきます。
腹筋する様な感じで頭を持ち上げ、脚でカラにしがみつきます。
最後にお尻がぬけます。翅に血液を送ります。
翅がどんどん伸びていきます。ここまで背中が割れてから大体1時間です。個体によってあっさり羽化するものや時間がかかるものがあります。朝日が登る頃には体色も濃くなり、セミらしくなります。
成虫になったセミは体がしっかりするのを待って飛び立ちます。飛び立った後、すぐに鳴くことはできません。数日経って体が成熟してから、やっと鳴くことができます。鳴くのはオスだけで、メスは鳴きません。オスは鳴くことでメスを呼び寄せて交尾をします。その後メスは産卵をします。成虫になってからのセミの寿命は2~3週間くらいです。
こどもの国では毎年7月下旬と8月上旬の土曜日にイベント「セミの羽化とカラスウリの花かんさつ会」を行なっています。神秘的なセミの羽化、レースのようなカラスウリの花、どちらも夜にしかみることができない自然の不思議を体験してみましょう。
※イベントの開催日など詳細についてはイベントカレンダーで告知をします。