アゲハチョウの飼育観察【夏休み自由研究】
6月後半にもなると、そろそろ夏休みの自由研究でどんなことをしようか考えている人もいるのではないでしょうか。もし、アゲハチョウの観察をしたいと思っているなら、ビジターセンターでの飼育方法が参考になるかもしれません。
ビジターセンターでは春から秋にかけて、ほぼ常時アゲハチョウの幼虫を飼育展示しています。幼虫は1ヶ月もかからずに蛹になってしまうので、また別の幼虫を探さなければならないのですが、ビジターセンターのバルコーニーや周辺にはアゲハチョウが卵を産みつけるミカン科の植物(ユズ、ミカン、サンショウ、カラスザンショウ、キハダ)が植えてあるので、そこを探すと卵や幼虫が見つかります。
こどもの国で見られるアゲハチョウの仲間で、ミカン科の植物に産卵するものはアゲハチョウ(ナミアゲハ)、クロアゲハ、カラスアゲハ、オナガアゲハ、ナガサキアゲハの5種類です。他にクスノキ科の植物を食べるアオスジアゲハ、セリ科の植物を食べるキアゲハ、毒のあるウマノスズクサを食べることで体内に毒をもつジャコウアゲハが見られます。
もし、家に庭やベランダがあるのであれば、ユズの木を育ててみてください。ある日アゲハチョウの幼虫がいて、ユズの葉が食べられていることに気づくことになります。ユズやサンショウなどを家で育てることができれば、アゲハチョウの飼育は簡単です。飼育する時に一番重要なのは、十分な量のエサを用意することです。
アゲハチョウの一生
自由研究でアゲハチョウを飼育する時、あらかじめアゲハチョウがどのくらいで卵から成虫になるかを知っておくと、蛹になる時期や羽化するタイミングを予測することができます。アゲハチョウの仲間はサナギで冬を過ごし、春に成虫になった後、「卵→幼虫→蛹→成虫→」のサイクルを2〜5回繰り返します。秋に蛹になったものは春になるまで羽化せずに過ごします。アゲハチョウ(ナミアゲハ)を夏に飼育した場合、それぞれの期間の目安は次の通りです。
産卵(4~5日)→ふ化→1〜4齢(若齢)幼虫(10~12日)→5齢(終齢)幼虫(5~6日)→前蛹(1日)→蛹(10~12日)→成虫(2週間)
7月中に幼虫を見つけて飼育を始めれば、夏休み中に羽化の様子を観察することも可能です。
飼育方法
ビジターセンターでは、卵から4齢(若齢幼虫)までは、プラスティック容器などの密閉できるもので飼育しています。見つけた卵や幼虫は、葉ごと採集して容器の中にいれます。密閉できる容器だと、摘み取った葉でも萎れず、幼虫が食べることができます。若齢幼虫のうちは食べる量は少なく、特に1〜2齢のうちは1枚の葉で十分なくらいです。食べる量を見ながら、必要な分だけ葉を与えます。容器に空気穴は開けなくて大丈夫です。
1日1回はフタを開けて中のフンを掃除し、葉が傷んできた場合は新しいものと交換します。この時、ピンセットや筆などがあると掃除しやすいです。
若齢幼虫のうちは鳥のフンのような模様をしています。終齢(5齢)幼虫になると、緑色になります。終齢幼虫は、それまで食べた葉の量よりもはるかにたくさんの葉を食べます。そのため、葉がなくなってしまわないようにこまめにチェックしてください。
ビジターセンターでは終齢幼虫になるとプラスティック容器から大きめの飼育ケースや水槽にうつして飼育しています。枝ごととってきた葉を水を入れたビンにさし、萎れないようにします。ビンにはワタなど(ビジターセンターでは水槽用の濾過マットを使っています)を詰めて枝が動かないように、水の中に直接幼虫が入らないようにします。
終齢になって5日くらい経つと、倍以上に大きくなり、まるまるとした幼虫になります。今までは丸っこいウンチをしていましたが、十分に成長すると、最後にゲリ状の水っぽいウンチをして、蛹になる場所を探してあちこち這い回るようになります。この時、飼育ケースを開けっぱなしにしておくとどこに行ったかわからなくなるので、しっかりとフタをしておいてください。
気にいった場所を見つけると幼虫は蛹になる準備を始めます。ナミアゲハの場合は、飼育ケースの壁や天井で蛹になることが多く、枝や棒などを入れておいてもあまり利用してくれません。さんざんうろうろしまくった幼虫は最終的に飼育ケースの壁などに糸を貼って足場を作り、「前蛹」という状態になります。前蛹になってから1日経つと、脱皮して蛹になります。
飼育ケースの壁や天井で蛹になった場合、羽化に失敗してしまうことがあります。羽化する時に目の前に脚でつかまることのできる場所がないと、そのまま下に落ちてしまい、ハネをうまく伸ばせず羽化不全になってしまいます。そのため、失敗しないよう、蛹を移す必要があります。
紙で作った三角のポケットを枝などにとめ、その中に蛹を入れます。蛹を外す時はまず両脇の2本の糸を切り、お腹の先だけでぶる下がっている状態にします。お腹の先の部分にくっついている糸をピンセットなどで擦り、蛹をはずします。この時決して蛹を引っ張ってはずそうとしないでください。また、ポケットに入れる際は、もともとの蛹の向きと同じにします。
蛹になってから10日ほど経つと、蛹の色が黒っぽく変化してきます。これは中の体の模様が透けて見えている状態で、まもなく羽化が始まる合図です。蛹が割れて中から成虫が出てくる瞬間は割とあっというまなので、なかなかタイミングよく見ることは難しいですが、見られた時は感動します。個人的な飼育経験からすると、大体早朝からお昼ごろまで、遅くとも午後2時くらいまでの間に羽化することが多く、夜間に羽化したものを見たことはありません。羽化した成虫は縮れたハネがどんどん伸びていき、10分も経つとすっかり広がります。体がしっかりするまでは数時間はかかり、半日もすると飛び立ちます。
ざっくりではありますが、アゲハチョウの飼育や成長について書かせていただきました。羽化の瞬間は観察できると特に嬉しいものですが、熱心に観察すれば、幼虫が脱皮をしたり、蛹になる様子、ふ化なども観察可能です。この夏アゲハの飼育に挑戦してみるのはいかがでしょうか。ビジターセンターにもお立ち寄りください。